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Tirant lo Blanc

Joanot Martorell
Tirant lo Blanc

第八十五章

いかにガーター兄弟団が結成されたか

 「すでに一年と一日が経過し、祝宴の幕は閉じられました。しかし国王は主だった人々に使者を送られ、もう数日出発を待つようにご依頼になりました。というのも陛下は兄弟団の結成を公表なさりたかったからです。この新しい兄弟団には、文句のつけようのない経歴を持つ二十六人の騎士が入れることになっておりました。皆は喜んで出発を延ばしました。私、そしてここにおります騎士たちが国王ご自身の口からうかがったところによりますと、この兄弟団結成のきっかけはまさに次のような出来事だったのです。ある盛大な舞踏会でのことです。踊り疲れた国王は大広間の一方の端で休まれ、王妃はもう一方の端で侍女たちと休まれておりました。騎士たちは侍女たちと踊り続けております。そのとき、騎士と踊っていた一人の侍女が国王の近くまでやってまいりました。侍女がくるくると回転しているうちに靴下止めがずり落ちてしまいました。皆の話しを総合しますと、それは左足の靴下止めで、帯状のものだったようです。国王のおそばにいた騎士たちが床に落ちた靴下止めに気付きました。その侍女はマドレシルバという名でした。彼女は侍女の中で目立って美しいというわけでもありませんでしたし、また特に優雅であったというわけでもないことを申し上げておかねばなりません。多少見目はよろしかったし、踊りと話術は軽快で、歌もそこそここなしました。しかし隠者殿、彼女よりも器量がよく、魅力的な女性を挙げていけば、三百人はいたでしょう。しかし男の好みは様々です。国王のおそばに侍っていた一人の騎士が言いました。
『マドレシルバ、靴下止めが落ちましたよ。あなたのいけない小姓がきちんと締めてくれなかったのでしょう』
侍女は少し恥かしそうに踊りを止め、向き直って靴下止めを拾おうとしましたが、もう一人の騎士がそれより早く拾ってしまいました。騎士の手中に落ちた靴下止めをご覧になった国王は、騎士を呼び寄せられ、靴下止めをご自分の左の靴下の膝の下辺りに締めるようにお命じになりました。
この靴下止めを国王は四ヶ月以上もお着けになっていましたが、王妃様はなにもおっしゃりませんでした。そして国王はご盛装なさればなさるほど、好んでこの靴下止めをお着けになり、皆の目に触れるようになさいました。その頃、敢えて国王にご意見申し上げようという者もなかったのですが、ご寵愛を受けていた一人の召使が、あまりにも長いことお着けになっていると思い、ある日、国王と二人だけになったときにこう申し上げました。
『国王陛下、陛下は内外の人々や、女王陛下ほか貴婦人方がなんとおっしゃっているかご存知でしょうか!』
『一体、何のことだ?すぐに言ってみろ!』と国王はおっしゃいました。
『それでは申し上げましょう。陛下が、並み居る女性の中でも軽んじられている、あのように身分の低い、とるにたらぬ侍女の持ち物を、誰の目もはばからずにかくも長い間、御身に着けられていらっしゃるという奇妙な出来事に皆、驚いておるのでございます。彼女が女王か女皇帝であればまだしもでございますが、とんでもない!家柄にせよ、器量にせよ、また知性、優雅さなどその他の美点にせよ、彼女に勝る女性は陛下の王国にはいないのでございますか?陛下の御手ならなんなりとお好きなものを集められますのに』
国王はおっしゃいました。
『王妃は不満なのだな!その上、外国人や廷臣たちも飽きれているというわけだ!』
そして、フランス語でこうおっしゃいました。『Puni soit qui mal y pense!(邪推する者は罰せられるべし)』 そしてこう続けられました。
『今、ここで神に誓おうぞ。余はこのことに因んだ騎士団を作ってやる。この世が続く限り、長く人々の記憶に残る兄弟団をな』
そして靴下止めをそれ以上お召しになろうとはせずにお外しになりました。とてもがっかりしていらっしゃったとは思いますが、表面上は平静を装っていらっしゃいました。
さきほど申し上げましたように、祝宴が終了しますと、次のような命令をお出しになりました。
『まず、城を築き、その中に尊き聖ジョルディを祭る祭壇を建立すること。城の名は、その気高き所在地に因みオンディゾルとする。祭壇は修道院の教会の内陣に倣って作られる。祭壇を入って右手に二脚、左手二脚の椅子を置く。これらを先頭としてそれぞれの側に十一脚の椅子を用意せよ。椅子は都合二十六脚ということになる。椅子には騎士が座り、その頭上には黄金の剣を掲げること。鞘の覆いは各々の趣味に応じて、真珠または金銀細工の刺繍を施した布、あるいは赤い絹布とする。各自できるかぎりの贅を尽くすこと。剣の隣には馬上槍試合用の兜を配する。兜は念入りに鍛えた鋼か、丁寧に金粉を塗った木製であること。兜の上部には好みの記章をあしらう。椅子の背には、金板または銀板に騎士の紋章を描き釘で打ち付けておくように』
次に、祭壇でいかなる儀式が行われ、どのような騎士たちが団員に選ばれたかをお話ししましょう。国王が二十五人の騎士をお選びになりました。国王ご自身を入れて団員は二十六人ということになります。まず国王が規則に書かれている掟をすべて守ることをお誓いになりました。入団を希望する騎士が誰でも団員になれたわけではありません。最初に選ばれた騎士はティランでした。つまりティランが最良の騎士であるということになります。その後、ガーラス王子、ベタフォール公爵、ランカストラ公爵、アッゼタラ公爵、ソフルク侯爵、サン・ジョルディ侯爵、ベルプッチ侯爵、大将ジュアン・ダ・バロイック、ヌルタバール伯爵、サラスベリ伯爵、アスタフォール伯爵、ビラムール伯爵、ラス・マルチャス・ネグラス伯爵、ジュイオザ・グアルダ伯爵、アスカラ・ルンプダ領主、プッチベール領主、テラ・ノバ領主、ジュアン・ステゥアート師、アルベール・ダ・リウセック師、といったイングランド出身者、および、外国人からはベリー公爵、アンジュー公爵、フランダス伯爵らが選ばれました。総勢二十六人の騎士です。
隠者殿、入団候補者に対しては次のような儀式が行われました。まず大司教または司教を選び、彼を介して入団候補者に封印をされた兄弟団の規則書を渡します。次にその騎士には靴下止めを一面に縫い付け、テンの毛皮の裏を付けた服と、アーミンの裏付きの青いダマスコ織のマントと長衣が届けられます。長衣は足元に達するほど長く、白い絹の紐で首元で締めるようになっています。両端を跳ね上げればマントと共に中の服が見えるようにできているのです。頭巾にも刺繍がほどこされ、アーミンの毛皮の裏が付いていました。刺繍はガーターをかたどっています。つまり、多くの貴婦人が靴下を留めるとき使う留め金付きの帯です。貴婦人方は、まず留め金でガーターを締め、残った端をガーターの下を通してぐるりと回し、留め金の上辺りで結び目ができるようにし、先は足の中ほどまでだらりと垂らしておきます。刺繍もそのような形になっているのです。ガーターの真中には、国王の発せられたあのお言葉が記されています。『邪推する者は罰せよ』。このように服にも、マントにも、頭巾にも、ガーターの刺繍があり、団員は、街中であろうと市外であろうと、また武装していようとなかろうと、常にそれをまとわねばならないことになっております。もしうっかりして身につけていないときに、紋章官、伝令使、または属官に見咎められれば、たとえ王の御前であろうと、いかに重要な場所であろうと、金の首飾り、頭飾り、あるいは剣などを没収されても文句は言えません。また、制服を着用していないのを見つかった騎士は、そのたびごとに紋章官、伝令使、または属官に金貨二アスクーツを渡さねばなりません。このうち一アスクーは聖ジョルディの祭壇のロウソク代に当てられ、残り一アスクーは紋章官、伝令使、また属官に不正を発見した褒美として与えられます。
選ばれた大司教、司教またはその他の聖職者は、国王の代理ではなく、兄弟団の代理として騎士を教会に連れていきます。いかなる教会でも良いのですが、もし聖ジョルディの教会があれば優先的にそこへ行きます。聖職者は騎士に祭壇の上に手を置かせ、次のように誓わせるのです」

Traducido por Ko Tazawa
Joanot Martorell, Tirant lo Blanc . Tòquio: Editorial Iwanami Shoten Publishers, 2007
Tirant lo Blanch. Portada de la traducció espanyola. Valladolid, 1511
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